研究概要 |
1)発現プロファイルの収集と解析結果としては、酵母について、合計400個の遺伝子欠失変異株における発現プロファイルを作成し、ブーリアンモデリング等による遺伝子発現調節ネットワーク作成を行った。この400個のDNAマイクロアレイデータを用いて、出芽酵母のSET domainを有する遺伝子の制御機構解明を行った。野生株ではストレス応答遺伝子群の発現は浸透圧ストレスに応じて急激に上昇した後,減少する変動を示すのに対し,SET7破壊株では浸透圧ストレスによる急激な発現上昇は起こるが,減少が起こらないことが判明した。この結果は,SET7が浸透圧ストレス応答遺伝子の抑制機構に関与していることが示唆された。 2)近年,遺伝子発現データに基づく癌組織の識別問題において,多くの教師付き機械学習法が応用されている。特にSupport Vector Machines (SVMs)は,最も有効な手法の一つとして主流になっている。しかしながら,他のカーネル識別法の応用に関する研究報告はほとんどなされていない。本年度はカーネル識別法の一つであるカーネル部分空間法を癌組織の多クラス識別問題に適用し,複数のタイプのmulticlass SVMsと識別性能を比較した。7つの癌マイクロアレイデータセットを用いた比較実験の結果,カーネル部分空間法はhigh-dimensional dataに対して,multiclass SVMsに匹敵する高い識別性能を示すことが明らかになった。また,gene selectionと併用することにより,より高い識別性能を得ることができた。さらに本研究では,クラス分離度を測るFisherの基準をカーネル化し,カーネルパラメータの選択基準として応用した。実験の結果,カーネル部分空間法におけるパラメータ選択において有効であることが示された。この基準は他のカーネル識別法においても適用可能であり,識別のためのカーネル設計において有用であると考えられる。
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