研究概要 |
ヒトや植物への病原性や植物病原菌駆除能、難分解性環境汚染物質も含む多種多様な有機化合物資化能をもつβ-プロテオバクテリアのセパシア菌(Burkholderia cepacia)ATCC17616株では、ゲノムが3.4Mb,2.5Mb,0.9Mbの3種の環状染色体から構成され、生育環境変動により各染色体が大規模で多様な再編成化現象を示す結果、新規形質を容易に獲得する。本菌株染色体の構造と再編成の解明、そして再編成と染色体進化を司る分子機構の実験的提示を本研究ではめざし、以下の成果を得た。 1.PacI,PmeI,SwaI,I-CeuIとPFGE法を用い、3種の染色体の物理地図を決定し、3種の染色体地図上でのrrnオペロンの位置を決めた。 2.PCR法を用いて、dnaA,gyrB,rpoD,dnaK,recA等の基本的生命維持・活動に関与する15種の遺伝子を単離した。dnaAとgyrBは3.4Mb染色体、dnaKは2.5Mb染色体、rpoDは両染色体に存在していた。 3.染色体地図上での挿入部位同定と挿入部位近傍領域の単離が容易なTn5誘導体の染色体挿入ライブラリー約5,000株から、37株の各種栄養要求性突然変異株と40株の鉄獲得・代謝異常突然変異株を取得した。his及びasp突然変異や鉄獲得系突然変異はいずれも3.4Mb染色体に、lys突然変異は2.5Mb染色体に存在したが、met及びtrp遺伝子群は両染色体に支配されていた。 4.既知の5種の挿入配列(IS)をPCR法で取得したが、ゲノムあたりのコピー数はいずれも3〜9と少なかった。一方、遺伝学的捕捉系を用い、可動遺伝因子を多数取得したが、この中には既知のISとともに新規のISが複数見出された。
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