マラリアは年間200万人もの死亡者を生じる最大の熱帯病である。原因となる熱帯熱マラリア原虫のゲノム解読は、国際コンソーシウムによって開始され、すでに、第2・第3染色体の全塩基配列が決定され、14本の染色体上に存在する3000万塩基のゲノムの全塩基配列が解読される日も間近に迫っている。そこで重要になるのが発現遺伝子の解析である。 我々は、独自に開発したオリゴキャップ法を用いて赤内型培養原虫から全長cDNAライブフリーを作成し、そのうち2490クローンの5'端をワンパスシークエンスした。これらを、第2染色体、および、第3染色体の塩基配列と比較したところ、前者に3種、後者に1種の新規遺伝子が同定された。なかでも、1遺伝子は16個ものエクソンを有していた。既知遺伝子クローンの分析から、全長率はおよそ50%と推定された。同一遺伝子の5'UTR端の分析では、5'端がクローンによって著しく分散する傾向を示していた。 塩基配列は、データベース化し、医科研内のホームページで公開した(FULL-malaria http://133.11.149.55/)。 また、新規マラリアワクチンを開発する目的で、ネズミマラリア原虫から、全長cDNAライブラリーを作成した。マウスに2000クローンのプラスミドをDNAワクチンとして投与し、その後、原虫を接種感染して生存に与える影響を観察した。その結果、意外なことに、ワクチン投与群は、コントロール群より、生存期間が短縮しており、この条件では、ワクチンが悪影響を示すことが明らかになった。ワクチンのスクリーニングは始まったところである。今後、条件を変えてさらに検討を行いたい。
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