本研究では、two hybrid法の代替となる簡便な蛋白質間相互作用解析法の開発と応用を目指した。GFP-FRET法では、波長特性が異なる2種類のGFP改変体それぞれを、試験蛋白質と融合・発現させ、その相互作用をFRET蛍光として評価する。two hybrid法と異なりGFP-FRET法は、原理的にはどのオルガネラでも行える。そこで、小胞体内腔での蛋白質間相互作用を、GFP-FRET法を用いて調べることとした。また、GFP-FRET法の欠点に、2種のGFP改変体が適切な角度と距離で近接しなければ強いFRET蛍光が得られず、試験蛋白質同士が結合してもFRET蛍光を観察できないことがある。本研究では、その欠点の克服も試みた。 そこで本研究では第一に、GFP改変体/試験蛋白質間のリンカー配列同士が弱いアフィニティーを持ち、その結果、試験蛋白質同士の結合依存的に、常にGFP改変体同士が適切に配置されるというシステムの開発を行った。そのためまず、分子内GFP-FRETにおいてリンカー候補を2個タンデムに繋げ、強いFRET蛍光が得られるリンカーを選別した。その結果、ロイシンジッパーで2量体を形成すると予測されるある種のポリペプチドが、リンカーとして適切であることが分かった。 第二に、GFP-FRET法を用いて小胞体内の蛋白質間相互作用を網羅的に調べる前段階として、新規小胞体蛋白質の同定を行った。方法としては、小胞体残留シグナル(C末端にKDEL)を持つ蛋白質をコードするcDNAを、データーベースから検索した。結果として、3種類の新規小胞体蛋白質を同定できた。 今後の課題としてはまず、今回の研究で得たリンカーが、分子間のGFP-FRETにも幅広く使えるかどうか、検討する必要がある。また、そこで汎用化されたGFP-FRET法を用いて、小胞体内での蛋白質ネットワークを明らかにしたい。
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