研究概要 |
高等真核生物の遺伝子はreplication factoryと呼ばれる核内の構造体に於いて複製される。しかし、複製因子の多くはfactoryに必要な分子以上のスペア分子が核内に散在しており,replication factoryの実体解明の障害となっている。巨大で複雑なゲノム構造を反映させながらDNA複製機構を理解するためには,核内で実際に働いている因子に焦点を絞った解析が必要不可欠である。そこで,DNA複製関連因子の核内での動態をクロマチン分画法により解析した。マウスDNAポリメラーゼα,δ,ε,プライマーゼ,Cdc45に対する特異抗体を作製し,Swiss3T3細胞及びFM3A細胞中の細胞内局在部位を詳細に検討した。DNAポリメラーゼα,δ,ε,プライマーゼ,Cdc45はPCNAやMcmと同様に90%以上が0.1%Triton X-100を含むCSK bufferにより抽出されたが、DNase Iにより可溶化されるクロマチン結合画分に数パーセント存在することを見出した。この画分に含まれる割合は細胞増殖刺激に呼応し、S期で最大になることも判明した。一方、クロマチンとの結合の強さや安定性を検討したところ,Cdc45が安定にクロマチンと結合していたのに対し,DNAポリメラーゼαやプライマーゼはクロマチンから容易に遊離することを見出した。また,プライマーゼを構成する二つのサブユニット,p54とp46は2M NaClにより可溶化されるクロマチン結合画分にも検出され,フリーのプライマーゼヘテロダイマーの局在部位がポリメラーゼαの他のサブユニット,p180とp68を伴うヘテロテトラマーとは異なることが示唆された。以上の結果から,哺乳類細胞のDNA複製を行っているreplication fociの検出系が確立できた。この系を用いて,様々な刺激や環境化での複製反応を検出することで核内の複製を反映した解析が可能となり,現在検討中である。
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