本研究の目的は、in vivoでの蛋白/染色体の相互作用を解析する方法論を確立し、ヒトDNA複製の細胞周期調節機構の研究を進めることである。我々はヒト細胞における複製開始蛋白の核内構築とその細胞周期調節についてすでに仮説モデルを提唱しているが、本年度の結果も概ねその妥当性を示唆した。in vivo cross linkを用いた実験から、ORC/CDC6は非クロマチン核構造上に結合していることがより確かに示された。ORCに関しては、ORC1を含まないsubcomplexがあり、これらは核構造に結合していないことも示唆された。これらは複製以外で機能しているかもしれない。ORC/CDC6がMCM6量体をG1期にクロマチンに結合させると考えられるが、これはORC/CDC6結合部位とは少し異なるnuclease感受性クロマチンだと考えられる。一方、我々は複製開始蛋白と相互作用している可能性がある蛋白として、RB/E2Fによる転写制御に関与していると考えられるクロマチンリモデリング複合体の一構成蛋白を同定した。その機能解析のために、その蛋白の阻害物質を用いることを考え、その特異性を確実にするため、阻害物質に抵抗性となる変異蛋白を作成し、発現する細胞株の樹立に成功した。今後これを用いて解析が進むものと期待している。この系を用いて、RB/E2Fによるcyclinの転写制御での、この蛋白の役割も解析できると考えている。ヒト細胞複製単位における複製開始蛋白の結合様式のクロマチン免疫沈降法での解析については、MCMに関してはデータが得られつつあるが、最も重要であると考えているORC1蛋白に関しては、我々の抗体が免疫沈降法に適さず、まだ進捗していない。これに関してはtag付きORC1を安定発現している細胞の樹立に成功した。これを用いることで今後の解析が進むと期待している。
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