研究課題
特定領域研究
一般に、観測されるシステム要素のタイムコースからシステム要素間の相互作用を推定することは、一種の逆問題である。これまで逆問題解決のための革新的な突破口として、微分方程式の立式に、べき乗則に基づいたS-systemモデルを、観測データを再現する多数の内部パラメータの自動推定法に進化アルゴリズムを適用する方法を提案してきた。本研究では、数10の構成要素から成る遺伝子ネットワークをS-system表記に基づいてモデル化し、次に、観測可能な物質の量のタイムコースデータを再現しうるようにS-systemパラメータの最適化を行い、遺伝子間相互作用を推定するシステムを構築した。さらに、並列クラスターシステムを用いた進化アルゴリズムを基にした高速かつ高精度な多変数非線形数値最適手法の開発を行った。1.高速かつ高精度な多変数非線形数値最適化手法の開発:実数値遺伝的アルゴリズム(GA)を用いて、新しい世代交代モデルとしてMGGを採用し、交叉法としてUNDXを採用したGA手法を設計・開発した。2.小規模な遺伝子ネットワークシステムでの詳細な相互作用推定:1で開発した遺伝子相互作用推定システムの有用性を検証するために5遺伝子から構成されるネットワークの推定問題に適用した。野生型および1遺伝子破壊株を想定した6種の発現タイムコースデータを準備し、これらのタイムコースデータを開発した遺伝子相互作用推定システムに入力として与えた。システムは、それらのタイムコースデータを再現しうる60個のS-Systemパラメータの値を推定し、その結果からネットワーク構造を同定することができた。3.離散モデルと連続モデルの統合法の確立:大規模系を解する場合、離散モデルと連続モデルの組み合わせ手法によって遺伝子ネットワークの推定を行うことを提案してきた。推定のための戦略は、次のようにまとめられる。(Dまず、用意した解析対象遺伝子数+1セットのタイムコースデータの定常状態の値(発現量)に着目して、閾値検定モデルの解析手順に従って、二項関係を導出する。(2)次に、閾値検定モデルで導出した二項関係を用いて、多階層有向グラフモデルによりグループ化を行う。(3)次に、S-Systemを用いた推定を行う。まず、同値類でない遺伝子間の相互作用について、正か負かは定常状態の発現量データより確定できる。同値類の遺伝子間相互作用については、同値類に属する遺伝子群と同値類に影響を与えている遺伝子の自然状態の発現量のタイムコースデータと関係する遺伝子を一つずつ破壊した場合の発現量のタイムコースデータを与えて、S-Systemモデルのパラメータの最適化を行う。4.推定した相互作用ネットワーク構造からの知識抽出:開発した推定システムを用いて、推定試行を繰り返し、実験データを再現する多数のネットワーク候補を見出すことに成功した。これらの解候補から相互作用に関する重要な知識抽出ができるか検討した。各ネットワーク候補において、状態変数同士の相互作用の符号(+なら活性化、-なら抑制、ゼロなら無関係)に着目し、全構造ですべてに共通に現れる共通構造とその他の構造(非共通構造)に分類し、共通構造のもつシステム解析的解釈を検討した。共通構造は、感度の高い相互作用であり、実験タイムコースデータを再現する上で、重要不可欠なものであることが示唆された。
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