研究概要 |
<背景と目的>ゲノム解析の進展により人間の病理に関わる多くの細胞表面レセプター群が見出されてくると、現在全体の約1/3を占めている免疫グロブリン(Ig)様ドメインを持つレセプターを統合的に解析することが重要になってくる。本研究では最近免疫系細胞に幅広く見出されてきた免疫レセプター抑制性モチーフ(ITIM)を細胞内ドメインにもつヒト抑制性免疫レセプタースーパーファミリー(Inhibitory-receptor superfamily,以下IRSと省略する)の多くがIg様ドメインを持ち、また多様なリガンドを認識するため、統合的な蛋白質間分子認識データを収集する格好の標的であることに着目した。我々はIRSの中から、主要組織適合性抗原(MHC)を認識するKiller cell Ig-like receptor(KIR)やIg-like transcript(ILT)、更には抗体Fc部位を認識するFcγRについてリガンド分子認識機構の機能解析及びX線結晶構造解析を行うことを目的とした。 <検討結果と考察>本年度は、KIRのMHCに対する分子認識に関して2つのIg様ドメインを細胞外にもつKIR2Dのこれまでの解析を踏まえ、更に3つのIg様ドメインを持つKIR3DのリガンドMHC、HLA-B51の結晶構造解析及び活性型KIR2Dの機能解析を行った。決定したHLA-B51の立体構造から、KIR結合部位と予測される表面の電荷分布が他のKIRメンバーに対するリガンドMHCと異なっており、これが認識の特異性を決定していることが示唆された。また、真核細胞で発現させた活性型及び阻害型のKIR2Dの機能解析から活性型が阻害型より弱い親和性を示すことがわかった。おそらくNK細胞では活性型よりも阻害型のシグナルが強いことで誤った活性化を防いでいることが考えられた。現在同じくMHCを認識するIg-like transcript4(ILT4)の解析に取り組んでいる。
|