研究課題
タウ蛋白の凝集と神経細胞死のメカニズムを解明するために、FTDP-17に見られるP301L、R406W変異タウを発現するモデル動物を作製し、その解析を行った。1、P301L変異タウをプリオンプロモーターの制御下に発現するトランスジェニックマウスラインを確立し、24ヶ月齢まで経時的にサンプルを採取して免疫組織学および生化学的な解析を行っている。今年度は12、20ヶ月齢の脳について組織化学的解析および種々のタウ抗体を用いた免疫組織学的解析を行ったが、トランスジーンによる神経細胞の変化やタウの沈着は見られなかった。今後、さらに加齢したマウスを用いて解析を行う予定である。2、マウスよりも生活環が遥かに短い線虫を用いて、タウの発現により神経細胞の機能障害を生じるモデル系を確立できた。ヒト野生型、P301L、R406W変異型タウをmechanosensory neuron特異的に発現させ、touch sensitivityを調べることにより触覚神経細胞としての機能状態を評価した。その結果、変異型タウを発現すると著しい触覚異常が起こり、神経細胞機能が低下することが分かった。この機能低下は年齢依存的であり、孵化後の加齢に伴って促進された。経路の詳細を知るために種々の変異株との交配を行い、神経機能低下に関係する因子を探索した。ced3あるいはced4を欠損させても変化はないので、この経路はアポトーシスではないことが分かった。また、熱ショックにより機能低下が増強され、hsp70を発現することにより回復が見られたことから、コンフォーメーション変化が関係している可能性が考えられた。CDK5、MEK、JNKなどのリン酸化酵素の欠損は影響しなかったが、GSK3βを過剰発現すると機能低下が増強されたので、タウの過剰リン酸化が機能低下に関与している可能性がある。
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