研究概要 |
α-synuclein (aS)の不溶化と蓄積はPDをはじめとするsynucleinopathyの病因と考えられている。神経細胞にaSを過剰発現した線虫(C.elegans)を作出し、aSの蓄積と機能障害の評価モデル系を構築した。さらに劣性遺伝性パーキンソニズムPARK7の病因遺伝子産物DJ-1の抗酸化ストレス作用について検討した。C.elegansの摂食行動に関与するdopamine神経に特異的なdat-1プロモータを用いたaSトランスジェニック線虫では、免疫組織化学的にaSの発現をdopamine神経の細胞体・突起に確認した。野生型aS発現ライン、βシヌクレイン発現ラインでは摂食行動におけるbending頻度の低下はほぼ正常であったが、dopamine産生の欠如したcat-2変異では低下がみられず、A53T,A30P変異aS発現ラインにおいても低下が不十分であった。劣性遺伝性パーキンソニズムPARK7の病因遺伝子産物DJ-1の抗酸化ストレス作用について検討するため、ヒトDJ-1をSH-SY5Y細胞に恒常発現させると、野生型はきわめて安定であったが、L166P変異型はプロテアソーム系により速やかに分解された。これらの恒常発現株をミトコンドリア複合体Iの阻害剤であるrotenoneで処理後MTT法で生存率を検討すると、野生型DJ-1恒常発現株では有意な生存率の上昇が見られたが、L166P変異及びC106変異では抗酸化ストレス作用は消失していた。またN末端に異なる2種のタグを付加した野生型ヒトDJ-1の共発現により、DJ-1は細胞内で二量体を形成すること、L166P変異型DJ-1では二量体形成が障害されていることが示された。以上パーキンソン病における神経細胞変性の分子機構に関連して、変異型aS発現モデル線虫を確立し、DJ-1蛋白の抗酸化ストレス作用を明らかにした。
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