研究課題/領域番号 |
12210010
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
祖父江 元 名古屋大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (20148315)
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研究分担者 |
道勇 学 名古屋大学, 大学院・医学系研究科, 助教授 (90293703)
犬飼 晃 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (30314016)
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キーワード | 神経変性 / 運動ニューロン / ポリグルタミン / アロドロゲン受容体 / ヒストン / 熱ショックタンパク質 / geranylgeranylaceone |
研究概要 |
球脊髄性筋萎縮症(SBMA)は成人男性に発症する下位運動ニューロン疾患であり、アンドロゲン受容体遺伝子のCAG繰り返し配列の異常延長が原因である。延長ポリグルタミン鎖を有する病因とする変異アンドロゲン受容体(AR)がテストステロンの存在下で神経細胞の核内に蓄積し、CBPなどの転写関連因子の機能を阻害して転写障害をもたらすことが、神経変性の病態の中心であると考えられている。 分子シャペロンであるHsp70の発現誘導作用を有するgeranyl geranyl aceone(GGA)をSBMAの培養細胞に投与したところ、Hsp70の誘導とともに変異ARの核内集積が抑制され、細胞死の抑制がみられた。GGAをSBMAマウスに経口投与したところ、中枢神経系におけるHsp70の発現が増加し、変異ARの核内集積が抑制され、運動機能や寿命が改善された。有効濃度におけるGGAの毒性はみられなかった。 また、転写障害を標的とした治療として、ヒストン脱アセチル化阻害剤である酪酸ナトリウムの水溶液を経口投与したところ、ヒストンH3のアセチル化が亢進し、SBMAモデルマウスの運動機能および病理所見の改善が認められた。しかし、酪酸ナトリウムの効果は用量依存性であり、高濃度では毒性が認められ、そのtherapeutic windowが極めて狭いことが示された。 SBMA患者剖検組織の病理学的検討を行ったところ、変異ARは主として核内にびまん性に分布し、感覚神経など一部の細胞には細胞質内封入体がみられた。変異ARのびまん性の核内集積は、従来ポリグルタミン病の病理学的特徴とされてきた核内封入体に比べ、より多くの組織で認められ、その発現頻度はCAGのリピート数に相関していた。すなわち、封入体形成よりも変異タンパク質のびまん性核内集積が病態により深く関与していることが示唆された。
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