研究概要 |
「学習と記憶のダイナミックモデルとその実験的検証」 塚田らは、海馬において時空間文脈構造をコーディングする学習則を構築し、その妥当性を実験によって検証した。 (1)学習則の理論仮説 提案した学習則は、入力細胞間の同期発火とその時間的加重特性に基づいて結合強度を変化させる多細胞間の学習側である。入力細胞間の発火の同期性あるいは発火タイミングの一致性によって機能的にシナプス結合を強化するのが特徴である。シナプス加重空間を有効に使って時空間情報を神経回路網の加重空間に埋め込み、高い文脈分解能を持つことをモデルシミュレーションによって示した。(Biolgical Cybernetics 92:139-146,2005) (2)時空間学習則の実験的妥当性 入力間タイミングの一致性とその時間履歴を仮定した時空間学習則仮説の妥当性を示すことができた。(電子情報通信学会誌 87:272-278,2004) (3)逆伝播スパイクに基づくタイミング依存性LTP/LTD(入力-出力タイミング依存性LTP/LTD) 海馬神経回路のシェファー側枝とCA1上昇層の二刺激の相対的タイミング(τ)を変化させて、オプティカルレコーディングによってLTP/LTDを計測した。結果として、放線層の基部では(LTP;τ=0ms)を中心としたメキシカンハット型(τ=+20,-20ms;LTD)のプロフィールを示すのに対し、末端部では非対称(τ=-20msでのLTDの消滅)が観測された。部位によるプロフィールの違いは抑制性細胞の影響であることがわかった。(Hippocampus 15:68-78,2005,Hippocampus 15:104-109,2005)
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