研究概要 |
理論と実験によって、海馬-皮質系の記憶の書き込みと読み出しの情報表現(コーデング)を明らかにした。具体的には、海馬神経回路において、塚田らは時空間パターンをCA1回路のシナプス荷重空間に一時的に貯えるのに時空間学習則が有効に働いていることを理論と実験によって示した(Tsukada et al.,1996,1998;塚田,2004;Tsukada et al.,2005;Aihara et al. 2005;Tsukada and Pan,2005)。 聴覚皮質では、聴覚皮質に感覚情報と海馬情報の間にタイミングに依存したゲーティング(タイミング窓)が存在することを示した‘(Yamamoto et al.、1999、Miyazaki et al.,2005)。海馬CA1の活動規模によって聴覚野の応答に対し抑制性と興奮性の修飾が生じることは,海馬から大脳皮質聴覚野へ情報を書き込む際により複雑な能力の高い情報処理が可能であることを意味している。また、音と電気ショックの恐怖条件付け学習前後の聴覚皮質応答の光計測に成功した。条件付けられた周波数ではその応答領域が拡大するのにたいし、条件付けのない他の周波数では応答領域に有限な変化が見られなかった(Miyazaki et al.,2005)。実験結果に基づいてモデルを構築し、次の結果をえた。海馬の文脈情報の導入により引き込み領域が拡大するとともに,書き込み及び読み出し時間が著しく改善され、記憶パターンの正解率も向上した(Tsukada and Pan、2005)。また,引き込み領域の拡大はCS音を聴かせた場合のみ聴覚野の応答面積の有意な増加がみられた実験結果を説明していると考える。
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