研究概要 |
1.体性感覚野のトポグラフィックマップの形成機構の解明。 1)大脳皮質に内在したマップの形成機構。大脳皮質の領域に特異的に発現している遺伝子をaffymetrix社のDNAチップ(約1万5千の遺伝子)を用いて網羅的に解析した。その結果、胎生16日の皮質において領域特異的に発現する遺伝子を数十個単離した。さらにリアルタイムPCRおよびin situ hybridaiztionによって絞り込みをおこない、新規遺伝子をふくむ10個以上の遺伝子を同定することができた。現在、これらの遺伝子を胎生期の終脳に強制発現し、領野の発達に対する効果を検討している。 2)末梢の入力に依存したマップの形成機構。頬髭のパターンが皮質にトポグラフィクな関係を保って投射するという現象を説明するために1980年、Killackeyによってドミノ説が提唱されている。しかし、頬髭のパターンを遺伝子操作で変更した時に皮質のパターンがどのようになるかは不明であった。我々は、Shhをin uteroで発現させることにより頬髭のパターンを改変することに成功し、さらに改変されたパターンが皮質に投射されることを明らかにした。 2.大脳皮質ニューロンのシナプス機能の発達に関する解析。 脳由来神経栄養因子,BDNFは体性感覚野においては出生直後の臨界期に皮質第4層で発現が高く、シナプス機能の発達に何らかの役割を果たしていると考えられた。そこで、BDNFのノックアウトマウスについて、シナプスの発達過程を視床-皮質投射路を含む急性脳切片を用いて、電気生理学的に解析した結果、NMDA受容体のみをもつ未熟なシナプス(サイレントシナプス)がAMPA受容体にたいする応答性を獲得する過程にBDNFが必須であること、さらにBDNFはAMPA受容体のシナプスへの輸送を制御している可能性があることを明らかにすることができた。
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