研究課題
特定領域研究
体性感覚野の機能発達に関して、3つの側面から研究を行った。すなわち、体性感覚野が機能領野として確立される過程を1)脳発生の初期の主として遺伝的プログラムによって遂行される時期と、個体の経験によって神経回路発達が調節される時期に分け、さらに、後者については、2)受容野のパターン形成に関する末梢入力による調節および、3)視床からの興奮性入力と皮質4層のニューロンが形成するシナプスの機能発達機構にわけ、それぞれ研究を行った。まず、1)については、体性感覚野に領域特異的に発現する遺伝子としてcadherin6が知られているが、その機能は不明であった。我々は、全胚培養系とelectroporationによる遺伝子導入法によりcadherin6が将来の体性感覚野となる初期終脳の領域の安定化に必須であることを明らかにした。この研究は、終脳の体性感覚マに特異的に発現する遺伝子をDNAチップにより網羅的に解析する研究、さらにcadherin6の領域特異的発現に必須なエンハンサーを、BACシステムを用いて単離する研究に発展している。2)体性感覚野には頬髭の受容野が皮質表面に対して垂直に配列したカラム構造が存在する。このカラムの配列パターンは末梢の相同な写像になっているが、その形成機構はまだ十分に明らかとなっていない。我々は、in uteroで頬髭の発生に必須なShhを、アデノウイルスベクターを胎児表皮に感染させることにより、頬髭のパターンを改変することに成功した。ついで、末梢のパターン変化が中枢側にどのように反映されるかを解析し、末梢のパターンが中枢のパターンを神経伝達路に沿って順次決定していることを明らかにした。3)体性感覚野の4層のニューロンは視床からの入力に依存し、出生直後の1週間ほどの臨界期にシナプスを発達させる。このシナプスは出生直後にはグルタミン酸受容体のうち、NMDA受容体のみを発現したサイレントシナプスとして存在しているが、神経活動依存性にAMPA受容体を含むシナプスに変換される。しかし、そのメカニズムについては不明であった。我々は、脳由来神経栄養因子BDNFに注目し、そのノックアウトマウスの急性脳切片の電気生理学的解析から、BDNFおよび神経活動が相乗的に作用することにより、この変換を促すことを明らかにした。BDNFはシナプスポスト側に存在するその受容体に作用し、カルシウムの上昇を引き起こすことが必須である。この研究は、現在、BDNFによるANPA受容体の細胞内輸送機構の解析に発展してい
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