研究概要 |
脳の高次機能の典型は推論や言語といわれている.これらはいずれもシンボル処理と言われている.しかし脳におけるシンボル処理の実体および計算理論についてはほとんど判っていない.我々はこの問題に対してナビゲーションを例題として取り組んだ.ナビゲーションとは目的地に到達するための行動決定であるが,それには地図を使う.地図の脳内表現としては,個々の場所の認知と場所の相互関係の認知によって実現されると考えられる.しかし,地図の表現だけではナビゲーションはできない.個々の状況での地図の利用の手続きの解明が必要である. 従来,多くの知能モデルでは手続きはデータとともに与えられるものであった.しかし脳の場合には,手続きもまた知識といっしょに獲得されているはずである.ここでの問題は,手続きというものの獲得以前に手続きそのものの表現方式についてのモデル概念がほとんどないことである. そこで本研究では,脳の個々の感覚系で獲得された個別の処理モジュール,さらに感覚信号の予測モジュールなどが必要に応じて組み合わされてできた処理回路が,手続きの表現であると考え,そのための手続き探索の方式を提案した.手続きを形成する個々の機能部品は,過去の別の学習タスクなどによって次第に形成されたものと考えられ,脳の手続きを制御するマクロな制御系がそれらを動的に組み合わせることで入力を処理する回路を形成する.その制御の信号として我々は一種の注意を考える.注意はある瞬間に重要な回路を活性化することでその回路を選択し,選択された回路群の相互作用によってその瞬間の入力が処理されて出力される.そのような知的部品の組合せはタスクに依存して動的に検索されると考える.
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