研究概要 |
目的と方法:In vivo Protein Transduction(生体内蛋白導入法)はエイズウイルスTAT蛋白質の11個のアミノ酸からなるペプチド配列(TATペプチド)をN末端に結合させることにより、目的の蛋白質やペプチドを血液脳関門を越えて脳内ニューロンにin vivo導入させる画期的な方法である。(Schwarze et al.Science,285,1569-72,1999)この方法を応用し、生理活性ペプチドを細胞内に直接導入する事を目的として研究を行った。(1)まずこのTATペプチドの導入効率を確認すると共にその中枢神経に対する作用の有無を検索した。(2)次にTATに代わる新たな導入ペプチド(11R、9R、7R)を試作しその効率をTATと比較した。(3)さらに、11Rのペプチドを利用して脳スライス内の神経細胞に生理活性ペプチド導入する事を試みた。(4)また、上記の方法で導入した活性ペプチドを神経細胞の核内に限局させることを試みた。 結果と考察:11RはTATに比べ導入効率がはるかに高かった。Rの数が少なくなると効率は低下した。TATは海馬スライスのLTP誘導に強い抑制作用を示したが、11Rにはそのような作用は全く見られなかった。11Rでは培養細胞のみならず海馬スライスにも高率に導入することが出来た。SV40の核内導入ペプチドを11RのN末端側に付けると培養細胞、海馬スライスいずれににおいても選択的に神経細胞の核内に選択導入することが可能であった。Aキナーゼの特異的抑制ペプチド(PKI)を海馬スライスの核内に導入したところLTP形成には全く影響がなく、L-LTPの形成のみが抑制された。 以上のことから11R法はTATに比べ遙かに優れており脳の電気生理的機能解析や蛋白質導入による新しい脳保護薬創出には最適の方法であると結論した。
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