研究概要 |
常染色体劣性若年性パーキンソニズム(AR-JP)はパーキン遺伝子変異に伴うことが我々の研究グループにより明らかにされている.変異はパーキン遺伝子多岐に渡っており,世界中にその変異を持つ若年性パーキンソン病が存在することが分かった.しかしながら,その機能については何も分かっていなかったが,やはり我々の研究グループによりパーキンがUbcH7と反応するユビキチンリガーゼであることが明らかにされた.ユビキチンシステムはubiquitin activating enzyme(E1),ubiquitin conjugating enzyme(E2),そしてubiquitin ligase(E3)より構成されている.このシステムは細胞周期や受精など様々な現象に関わっており,神経細胞死においてもこの系が働いていることは重要な新しい知見である.AR-JPではubiquitinの付加反応が起こらず細胞にとって細胞毒性を示す基質が蓄積することで細胞死がおこると考えられる.実際患者で認められた変異型は全てE3活性を持っていなかった.現在yeast two hybrid系を用いて14クローンの基質候補を単離できており,詳細な解析を行っている.レビー小体はパーキンソン病の病理学的マーカーであり,ubiquitin陽性であることが分かっている.その細胞内封入体が存在しないAR-JPの原因遺伝子産物がE3であったことは他の神経変性疾患での病態解明の上で重要な情報となるであろう.
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