研究概要 |
細胞間のスパイク発火の時間相関を試行時間内での非定常性をも含めて視覚化する試みであるJoint-PSTH法は欧米の研究者により多く利用されている現在最も優れた解析法の一つである。我々の研究では、この方法には非定常なスパイク活動変動を発火率とスパイク相関という二つの変動成分に分離する問題において原理的な困難があることを指摘した。また、現在までに提案された多細胞データの解析法(cross-correlogram,Joint-PSTH,Unitary Event Analysis,Gravitational Clustering)に対して、その特徴および問題点を検討した。Unitary Event Analysisの数学的基盤の理解および問題点の考察を行い、Aertsenとの議論によりこの問題点を確認した。また、細胞活動間の時空間関係性による情報符号化の実験的検証の実例および重要性をAertsenの研究の概説としてまとめた。Grayとの共同研究で得られた麻酔下ネコ外側膝状体からの多細胞データに対して、Joint-PSTHおよびUnitary Event Analysisによる解析に着手した。従来の我々の研究ではcross-correlogramで相関解析を行ったデータに対して、相関の非定常性や多体性に関して見直しを行い、解析法の実際の問題点を考察した。また、麻酔下ネコ視覚系からのテトロード電極を用いた大規模な多細胞同時記録実験の準備を進め、麻酔下ラットの体性感覚皮質からのテトロード電極配列(3本の配列を2組)を用いたテスト記録を行い、最大16個のユニットの同時記録に成功した。今後も測定技術の開発、解析法の開発、および情報処理機構の解明という3本の柱のバランスを考慮したシステム的な研究を進めていく計画である。
|