アルツハイマー病の病因遺伝子、アミロイド蛋白前駆体(APP)のマウス脳組織でのラフト局在を決定する目的で、界面活性剤に不溶性の分画をショ糖勾配法を用いた超遠心分離により、低密度分画(DIG分画)を回収する方法を確立した。この方法は、世界中で多くの研究者により使用されてきたが、再現性良く、DIGを採取することは脳組織に存在する多量のプロテアーゼの混入のため困難を極める。今回、我々は、種々の方法論の改良によりこれらの問題を克服した。そして、APPが有意にDIG分画に濃縮していることを発見した。このDIGのAPPの生化学的特徴を詳細に解析したところ、APPが450kDa前後の蛋白複合体を形成していることを見い出す事ができた。これまで、APPが蛋白複合体形成をしているという報告はなく、世界で始めての発見といえる。APPの一部を用いて、DIG分画中に存在している分子で、APPに結合しうる分子を求めたところ、150kDaのこれまでに報告のないAPPの結合分子を見い出すことができた。この分子は、グリセロール勾配法で、APPと全く同じ挙動を取る事が判明している。また、免疫沈降法により、この分子とAPPが、複合体をなすことも判明した。この分子は、APPを含む蛋白複合体の一部である可能性が高い。この分子が、APPの酵素切断反応にも影響を与える結果も得られている。今後、この分子のノックアウトマウスにおける、ベータアミロイドペプチド代謝への影響を検討する予定である。
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