C型肝炎ウイルスタンパク質が細胞の増殖に及ぼす効果を解析する目的で、ウイルスの構造タンパク質コアの機能解析をおこなった。我々は、本タンパク質がアポトーシスを抑制する働きがあることを既に示したが、コア蛋白質を発現するトランスジェニックマウスでは肝細胞がアポトーシスの誘導に感受性を示すことも見いだしている。そこで機能的に異なるこれらの作用がコアのどのような働きによるかを明らかにすることを目的とした。そこでコア蛋白質と会合する細胞性因子を明らかにするために酵母を用いたtwo-hybridを行い結合する候補蛋白質を得た。その中の一つに核内受容体と、結合する因子を見いだした。本蛋白質はコアと結合すると同時に核内受容体に結合する配列を持つ。コア蛋白質との結合に必要な領域を決め、その領域を欠失した変異体を構築した。これら野性体と変異体を用いてコア蛋白質による核内受容体依存的な転写活性化を解析したところ、野性体結合蛋白質の場合にはコア依存的に核内受容体依存的な転写活性が見られたのに対して、結合能を失ったものでは活性が見られなかった。一方、コア蛋白質によるアポトーシスの誘導がレチノイドにより増加することを見いだした。この現象はコアと結合できない野性型蛋白質を発現させた場合にのみ観察され、コアと結合できない変異体では観察されなかった。以上の実験からコアと結合する細胞性因子によりレチノイド依存的な核内受容体の転写活性が制御されるが、この働きにコア蛋白質が関与すると推定される。なお、核内受容体の下流に存在する遺伝子の一つでアポトーシスを促進させる働きを持つtissue trans-glutaminaseがコア発現細胞で有意に高くなることも見いだした。
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