研究概要 |
(1)日本人肺がん患者における大規模case-control study;CYP2A6*4,*7および*9と喫煙による肺がんリスクとの関連についてさらに検討する目的で,日本人男性喫煙者1437名を用いた症例-対照研究を行った.頻度解析の結果,CYP2A6*4/*4,CYP2A6*7/*7およびCYP2A6*9/*9の頻度は対照群で4.6,3.4,4.9%であったのに対し,肺がん患者群では1.8,1.8,4.2%であった.CYP2A6*4,*7および*9を少なくとも一アリルでも有する全ての群において肺がんリスクが低下した.CYP2A6の触媒機能が日本人男性喫煙者の肺がんリスクに寄与していることが推察された. (2)スリランカ人口腔がん患者における小規模case-control study;スリランカ人口腔がん患者286名および健常者135名(全て噛みタバコ常用者)のCYP2A6遺伝子型を判定した。CYP2A6*4Cをホモ接合体で有する人の口腔がんリスクの相対危険率は,CYP2A6*1A(野生型)をホモ接合体で有する人に比べ約1/5と有意に低かった. (3)CYP1A2の誘導に関与する転写因子の同定;CYP1A2遺伝子の3-メチルコランスレンによる誘導に関与するエンハンサーに結合する核内因子を精製し,アミノ酸配列を決定した.この因子はLBP-1ファミリー(LBP-la, LBP-lbおよびLBP-lc)であった.また,LBP-1はAhRおよびArntと直接相互作用した.以上の結果から,3-メチルコランスレンによるCYP1A2頒伝子の誘導はエンハンサーに結合したLBP-1にAhR/Arnt複合体が相互作用することにより引き起こされることが明らかとなった.また,上記の研究とは別に,AhRシグナル伝達系の抑制因子として我々が新規に同定したAhRR遺伝子の遺伝子構造および発現制御機構を明らかにした.
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