研究概要 |
(1)日本人男性喫煙者における大規模症例-対照研究;CYP2A6遺伝子多型と肺がん組織型別のリスクについて検討する目的で,日本人男性喫煙者1705名を用いた症例-対照研究を行った.血液検体よりゲノムDNAを調製し,CYP2A6遺伝子多型を判定した.多重ロジスティック回帰分析により調整オッズ比を算出したところ,CYP2A6^*1/^*4,^*1/^*7,^*1/^*9,^*1/^*10,^*4/^*4,^*4/^*7,^*4/^*9,^*7/^*7および^*7/^*9を有するヒトにおいてはCYP2A6^*1/^*1遺伝子型を有するヒトと比較して,調整オッズ比が有意に低かった.また,喫煙による肺がんリスクは予測されるCYP2A6酵素活性に依存して低下した.肺がん組織型別に同様の解析を行ったところ,どの組織型においても喫煙による肺がんリスクは予測されるCYP2A6の酵素活性に依存して低下した.中でも,腺がんにおいてはCYP2A6欠損群におけるオッズ比は0.39であったのに対し,喫煙と非常に関係があると考えられている扁平上皮がんおよび小細胞がんにおいてはオッズ比は0.07および0.10であり,そのリスクは野生型の約10分の1から15分の1であった. (2)LBP-1ファミリータンパク質の生理機能のAhR-Arntとの関連;LBP-1タンパク質の核移行を調べたところ,LBP-1bのみが核に局在し,LBP-1aとLBP-1cは細胞質に局在した.この異なった細胞内局在がLBP-1タンパク質の転写活性に影響したと結論した.LBP-1bの核移行シグナルを調べたところ,オルタナティブスプライシングによってLBP-1bにのみに使われるエキソンがコードしている領域に存在することがわかった.また,このシグナルに点変異を導入し調べたところ,双極性の核移行シグナルであることが分かった.さらに,LBP-1aとLBP-1cの核移行メカニズムを調べたところ,LBP-1bとヘテロダイマーを形成し,それによって核移行が起きていることが明らかになった.
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