研究概要 |
CYP2A6はタバコ煙中に含まれるがん原物質NNKなどのニトロソアミン類の代謝的活性化に関与する酵素であり,本酵素が欠損しているヒトおよび変異型CYP2A6遺伝子型を有するヒトでは肺がんリスクが有意に低いことを我々は明らかにしてきた.日本人男性喫煙者1,705名について,タバコ関連ニトロソアミンを代謝的に活性化するCYP2A6の遺伝子多型と自己申告による一日あたりの喫煙本数の関係を調べた.予想されるCYP2A6の酵素活性によりCYP2A6遺伝子の野生型ホモ(*1/*1)をEM,野生型と変異型とのヘテロをIEM,変異型同士の組み合わせをIM,およびCYP2A6全欠損変異(*4)のホモをPMと分類した.CYP2A6遺伝子型により四群に分類した後,ロジスティック回帰分析により年齢および喫煙歴を調整した結果,喫煙による肺がんリスクは予測されるCYP2A6の酵素活性に依存して低下した.また,肺がん組織型別による解析も同様に行ったところ,喫煙量の指標としてpack-years値の高い喫煙群における肺がんリスクは,予測されるCYP2A6の酵素活性に依存してどの組織型においてもより低値を示した.中でも,喫煙と非常に関係があると考えられている扁平上皮がんおよび小細胞がんのリスクとCYP2A6遺伝子型の関連が明確であった. またラットCYP1A1とCYP1A2の遺伝子上流に,この誘導に関与するエンハンサーを見出し,XREとXRE IIと名づけた.XREには活性化したAhリセプター(AhR)とArntのヘテロダイマーが直接結合し,XRE IIにはLBP-1を介してAhRとArntのヘテロダイマーが間接的に結合し,転写を活性化することを示した.
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