これまでの研究により、マウス骨髄細胞からGM-CSF+IL-3+Th1サイ卜カインの存在下で誘導した樹状細胞BMDC1は、最も強いTh1あるいはアロCTLの誘導を促進できる機能を有していることを証明してきた。そこで本研究では、BMDC1および抗原特異的Th1細胞の同系腫瘍治療への応用性を検討した。A20Bリンパ腫にOVA遺伝子を導入し、OVAを仮想癌抗原として細胞表面に発現するA20-OVAを実験に用いた。A20-OVAをBALB/cマウスに皮内投与して、腫瘍径が8mm程度になった段階で、以下の7種類の方法で担癌マウスにワクチン治療を開始した;(1)未処置、(2)MMC不活性化A20癌細胞、(3)不活性化A20癌細胞+OVAパルスBMDC1、(4)不活性化A20癌細胞+OVAパルスBMDC2、(5)不活性化A20癌細胞+OVA特異的Th1、(6)不活性化A20癌細胞+OVA特異的Th1+BMDC1、(7)不活性化A20癌細胞+OVA特異的Th1+BMDC2。その結果、(1)群に比較して、(3)〜(7)の処置群では優位な腫瘍増殖の抑制効果が認められた。なかでも、(6)の処置により、80%のマウスが完治し、それらのマウスにおいてはIFN-γ産生型のTh1細胞や、A20-OVAに対する抗原特異的CTLが誘導されることが示された。以上の結果から、癌に対するワクチン療法においては、不活化A20-OVAと共に、BMDC1並びにTh1細胞を用いた細胞治療が有効であることが明確にされた。すでに、ヒト白血病患者末梢血から自己腫瘍特異的なTh1細胞を誘導できる系も確立したので、その臨床応用性について今後検討する予定である。
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