TGF-βファミリーの細胞内情報伝達を担う分子として新規のSmad分子Xenopus、Smad4βを同定し、その機能の解析を行った。Smad4βはhuman Smad4やそのホモログであるXenopus Smad4αやhuman Smad4とは、初期胚での体軸の形成能に関して異なる作用を示した。また細胞内での局在が異なっており、これはhuman Smad4やXenopus Smad4αのリンカー部位に存在する核外移行配列nuclear export signal(NES)によることが分かった。すなわちNES受容体であるCRM1に対する阻害剤leptomycin B(LMB)によって細胞質に存在したSmad4αが核内へと蓄積すること、またNES配列の疎水性アミノ酸をアラニンに置換した変異型のSmad4αが核内に蓄積することを見いだした。したがって、近縁分子にも関わらず、Smad4αとSmad4βでは異なる制御を受けること、またSmad4分子にNESが存在し、NESに依存した細胞内局在の調節機構が存在することをSmadファミリーとしては初めて明らかにした。 TGF-βは細胞種によってはアポトーシスを誘導することが報告されており、細胞死を誘導することによって結果的に癌化を抑制するメカニズムが考えられる。本研究ではTGF-βファミリーによる細胞死誘導の分子メカニズムについて、特にTGF-β activated protein kinase(TAK1)/JNKをはじめとするキナーゼカスケードの関与について検討を行った。染色体DNAの断片化はカスパーゼ阻害剤で抑制されるのに対し、アポトーシスの付随したクロマチンの凝集はカスパーゼ阻害剤では抑制されず、この効果がカスパーゼの活性化を介さないJNKの効果であることが示唆された。これらの結果から、Smadを介さないTGF-βファミリーの効果の例としてJNKによるアポトーシス制御の機構を明らかにした。
|