研究概要 |
LRC(leukocyte receptor complex)として知られるヒト19q13.4領域には,NKリセプターとして機能するKIRの他に,KIRと類似した多くのIg様レセプター遺伝子(ILT,LAIRなど)が存在する.ILT,LAIRのなかには,MHCクラスI分子に結合する能力をもったものも存在することから,免疫制御において重要な役割を果たしている可能性がある.マウスでは,ILT,LAIRに相当する遺伝子群としてPIR-A,PIR-Bが同定されているが,KIRに相当する遺伝子はみいだされていない.したがって,ヒトとマウスのLRC領域には遺伝子構成という点で大きな差異が存在するものと予想される.そこで本研究では,BACクローンをもちいて,マウスLRC相当領域のゲノム構造を解明することを目的とした. (結果) 1.Ly94遺伝子を含むBACクローンに,Tnnt1遺伝子,Tnni3遺伝子,Mbs85遺伝子,Flj20258遺伝子,Flj20510遺伝子,Gp6遺伝子を見出した.Tnni3,Tnnt1,Mbs85遺伝子はこの順に並んで存在し,また,Flj20510遺伝子とGp6遺伝子は並んで存在することが判った.ヒトでは,LY94遺伝子に隣接してFCAR遺伝子が存在するが,これまでのところ本遺伝子と相同と考えられる配列はBACクローン中に発見されていない.また,マウスのLy94遺伝子には,少なくとも7個のエクソンが存在することが判明した. 2.Pir遺伝子を含むBAC contig中に少なくとも,3個のPirb遺伝子をみいだした.これらの遺伝子は既知のPirb遺伝子と同様なエクソン・イントロン構造をもっていた.既知のPirb遺伝子とは異なったIg様配列をもった配列が少なくとも2箇所で検出された.これが,偽遺伝子であるのか,新たなPir遺伝子であるのかは,検討中である.
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