研究概要 |
HBV X蛋白(HBx)の転写修飾の分子機構の解明を目指し、1.核内標的RNA polymerase subunit 5 (RPB5)の構造と機能、2.HBV複製への効果、3.機能的拮抗因子RMPの細胞内局在と核内機能、4.細胞の不死化或は形質転換への影響を解析した。 1.RPB5の中央部を置換変異を用いて解析し、HBxの結合に必須な6残基と、TFIIFサブユニットRAP30との結合に必須な6残基を特定した。その内F76,I104,T111,S113は共通であった。前2残基は溶媒に表出せず蛋白構造の維持に必須な残基と推定され、他は表出し、結晶モデルでDNAと近接していた。この結果はHBxとRAP30が共通の領域に相互排除的に結合する可能性を示唆した。またRPB5のDNA結合能にこの4残基が必須または重要である事から、これらはRPB5のDNA結合能を標的としている可能性がある。 2.HBxの変異ライブラリーを用い、レプリコンによるHBV複製の回復能を検討した結果、HBxのcoactivationドメイン内の2つの不連続な領域がHBV複製促進及びHBV DNA複製の鋳型となるpregenomic (pg) RNAの合成に必要であった。HBxのcoactivation能にも同一の領域が必須であるので、HBxのcoactivation機能がpgRNA合成の促進に必要で、この効果によりHBV DNA複製亢進が起きることが強く示唆された。 3.HBxに拮抗するRMP/URIは細胞質でRPB5との複合体として存在し、その細胞質局在はDMAP1の共発現により、核質に優先的で、核内でcorepressor機能を示し、細胞質と核内とで異なる機能の制御蛋白と考えられる。 4.ヒト初代細胞の不死化と、ヒト不死化細胞の形質転換へのHBxの影響を解析した結果、不死化には影響を与えないが、形質転換の効率を促進する効果が示された。
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