HBV X蛋白(HBx)はRNA polymerase subunit 5(RPB5)及びTFIIBと相互作用し、転写のcoactivatorとして機能することをin vivo及びin vitro転写系で報告した。HBxの転写修飾の分子機構の解明とHBxのHBVウイルス増殖への影響と宿主細胞への影響を評価を検討した。 1.RPB5の中央部と基本転写因子TFIIFサブユニットRAP30の結合が、Pol IIとTFIIFの会合に必須で、RAP30の中央部の2残基がこの結合に関与していた。置換、変異を用いHBxの結合に必須な6残基と、TFIIFサブユニットRAP30との結合に必須な6残基を特定し、その内4残基が共通であった(投稿中)。RPB5のDNA結合能にもこの4残基が必須または重要であるから、RPB5のDNA結合能がRPB5の転写修飾の標的である可能性が示された。 2.HBxに拮抗するRMP/URIの相互作用パートナーとしてcorepressorであるDMAP1を同定した。また、RMP/URIの細胞内局在を検討した結果、RMP/URIは細胞質と核内とで異なった機能を持つ制御蛋白と考えられた。 3.野生型及びHBVレプリコンに外来性HBxを共存させHBV複製を検討した。HBxのcoactivationドメイン内の2つの不連続な領域がHBV複製促進及びHBV DNA複製の鋳型となるpregenomic (pg) RNAの合成に必要であった。HBxのcoactivation能がpgRNA合成の促進に必要で、この効果によりHBV DNA複製が元進されると推定された。 4.HBxのヒト初代細胞の不死化と、ヒト不死化細胞の形質転換へ及ぼす効果を、野生型及び各種HBx発現レトルウイルスを用いて解析した。HBx及びHBxのcoactivationドメインは、不死化効率には影響を与えないが、形質転換率を促進する結果を得た。
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