研究概要 |
1)成人T細胞白血病(adult T-cell leukemia:ATL)に高率に合併する高カルシウム血症の分子機構を解明するために破骨細胞の分化に必須の分子であるRANK ligandの解析を行った。ATL細胞におけるPTH-rP,TNF-a,M-CSF,OPG,RANK ligand遺伝子の発現を解析したところ高カルシウム血症の存在はRANK ligandの発現と有意に相関していた。RANK ligandの発現のあるATL細胞と正常人骨髄から単離したCD34,c-kit陽性血液幹細胞を共培養すると破骨細胞への分化誘導が認められた。この分化誘導はRANK ligandの作用を阻害するOPG-Fcにより抑制されRANK-RANK ligand系がATL細胞による破骨細胞への分化誘導、ひいては高カルシウム血症に密接に関与していることが示された。RANK-RANK ligand系はTリンパ球と樹状細胞の相互作用にも重要であり、本研究はATLにおける高カルシウム血症の治療に結びつくだけでなく、ATLの増殖機構の解明、治療につながるものと考える。 2)HTLV-I感染者における免疫不全状態の機序を明らかにするために解析を行い、HTLV-I感染者では特異的にナイーブTリンパ球の減少が見られ、一方、メモリーTリンパ球は増加していることを明らかにした。胸腺機能の指標であるT-cell receptor gene excision circle(TREC)をsequence detectorを用いて定量したところHTLV-I感染者では胸腺レベルにおけるTリンパ球の産生障害が認められることが明らかとなった。このようなナイーブTリンパ球の減少による免疫不全の結果としてHTLV-I感染者ではEpsten-Barr VirusのDNA量が増加していることを示した。このようなHTLV-I感染による免疫不全はATLの発症にも関連していると考えられる。
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