研究概要 |
1)5'側LTRのメチル化によりウイルス遺伝子の転写が抑制されることを報告したが(Takeda S et al.Int J Cancer)DNAメチル化機構を明らかにするためにHTLV-Iプロウイルスのメチル化を解析した。ATL細胞株、あるいは新鮮ATL細胞のゲノムDNAをsodium bisulfiteで処理し5'-LIR,gag,pol,env,pX,3'-LTRを増幅した。塩基配列を決定しメチル化CpGの頻度を解析したところgag,pol,env領域に強いメチル化を認めた。COBRA法との比較を行ったところ、相関が確認され、以後の解析にはCOBRA法を用いた。メチル化は最初にpol,env領域から検出されることが示された。Tax蛋白質産生細胞株と非産生株を解析したところ、非産生細胞では5'-LTRの高度のメチル化が存在したのに対して産生細胞株では5'-LTRはメチル化がないか、部分的なメチル化であった。このことからウイルス遺伝子の転写は5'-LTRのほぼ完全なメチル化がある場合に消失することが示唆された。ATL細胞とキャリアのHTLV-I感染細胞を比較するとATLにおいて5'-LTRは高度にメチル化されていた。 2)Methlated CpG island amplification/representative difference assay(MCA/RDA)法を用いてATL細胞とキャリアの感染細胞を比較し、腫瘍細胞で特異的に低メチル化されているDNA領域としてMEL1,CACNA1H,Nogo receptor遺伝子領域が同定された。MEL1にはPRドメインを有するMEL1とそれを欠くMEL1Sの二つのisoformが存在することが知られている。t(1;3)を有する急性白血病ではMEL1Sが過剰に発現していることが報告されているが、ATL細胞での発現をRT-PCR,5'-RACE法により解析をした。その結果、ATL細胞でもMEL1S遺伝子が発現していることが確認され、その転写開始点はエクソン4の上流に存在するputative exonからであることが示された。putative exonの上流のDNAメチル化を解析すると正常Tリンパ球では高メチル化されているのに対してATL細胞株では低メチル化であった。MEL1S発現の生物学的意義を検討するためにマウスT細胞株であるCTLL-2にMEL1,MEL1Sを発現するベクターを導入した。MEL1発現CTLL-2はTGF-βに対する感受性が亢進していたのに対してMEL1S発現CTLL-2では抵抗性となっていた。MEL1S遺伝子は抵抗性を賦与することが明らかとなった。
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