相同DNA組換え修復(HR)の中心分子Rad51には、一次構造が2-3割保存されたファミリー遺伝子が高等動物では5種類存在する(Rad51パラログファミリーと総称)。我々はこのファミリーのニワトリ遺伝子をすべて分離し、ニワトリ細胞株DT40においてジーンターゲティングを行いそれぞれの欠損細胞を作成した。欠損細胞は、すべてほぼ同一の表現型を示した。各パラログ同士は物理的に会合して複合体を形成し、さらにRad51とも会合して、そのアクセソリー因子として働くと考えられる。Rad51の一つXrcc3とHRに関与するRad52との、コンディショナルダブルノックアウト細胞を作成し、この細胞が多数の染色体断裂によって合成致死を示すことを見いだした。非相同末端結合(NHEJ)に関わるKu70と別のパラログRad51Bとのダブルノックアウトはホモは単離出来ず、この組み合わせも合成致死と思われる。Ku70とDNA-PKの欠損細胞の表現型の比較とダブルノックアウトの作製によって、Ku70がおそらくは断列DNA末端に結合することでHRを抑制しうることを示すことができた。さらに、英国のグループとの共同研究によって、Rad51パラログ欠損によってDT40の免疫グロブリン遺伝子がジーンコンバージョン(GC)をやめて高頻度突然変異(SHM)を起こす様に転換することが明らかとなり、抗体レパートリー拡大の分子機構とHRの関連と、GCとSHMの分子基盤の共通性が示された。
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