研究課題
特定領域研究
研究代表者および研究分担者は、損傷乗り越え複製(translesion synthesis)機構全般を総合的に理解し、発がんおよび発がん防御における役割を明らかにすることを目的として、以下に述べる研究を行った。1)色素性乾皮症バリアント群(XP-V)原因遺伝子の産物であるDNAポリメラーゼη(Polη)が損傷のない鋳型に対して複製の忠実度が著しく低いこと、TTダイマーだけでなく様々な損傷を乗り越えられること、また多くの場合、損傷の反対側に正しい塩基を重合することが分った。2)ヒトPolη遺伝子のゲノムDNAをクローニングしてその構造を決定したところ、終止コドンまでが約40kbにわたる領域にコードされ、11のエキソンに分断されていた。5種類のXP-V細胞におけるゲノムDNA上の変異を検出した。3)Polηが鋳型・プライマー型DNAに対して強い結合活性を示し、鋳型にTTダイマーを含んでいても、含んでいない場合と同程度の結合活性を示した。またTTダイマーの最初のTの反対側に正しい塩基であるAが存在する場合に安定に結合し、間違った塩基の場合には不安定であった。更にプライマーがTTダイマーの手前までのものとダイマーの一つ先までのものには安定に結合したが、もう一つ先まで伸びたプライマー・鋳型DNAに対しては、結合力が低下した。4)XP-V患者のモデルマウスを作成するため、Polηの必須領域を含むエキソン8へNeo発現カセットを挿入したターゲティングベクターを構築し、ヘテロノックアウトマウスを作成した。その交配によりホモノックアウトマウスがほぼメンデル則にしたがって誕生した。8週齢頃から週1回背中の毛を剃り、毎日、2,000J/m2のUVBを照射したところ、照射開始後13週目あたりから腫瘍が観察され、22週では100%のマウスに腫瘍が発生した。一方、野生型およびヘテロマウスにおいては、同じ週齢で腫瘍の発生は見られなかった。
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Proc.Natl.Acad.Sci.USA (in press)
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