研究課題/領域番号 |
12213081
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
野田 朝男 神戸大学, 医学部, 講師 (40294227)
|
研究分担者 |
藤原 美定 神戸大学, 医学部, 教授 (70030848)
|
キーワード | p53 / transcription / stress response / UV / Tumor suppression / promoter element |
研究概要 |
我々はこれまでにヒトp53遺伝子の発現制御機構を解析し、この遺伝子がこれまでに報告のない特異的な転写調節機構を持つことを明らかとしてきた。具体的には、ヒト細胞におけるp53の転写開始と紫外線ストレス応答を決定しているエレメントとして、転写開始点(mRNA合成開始点)より約50塩基上流に位置する約21baseの塩基配列(PE21)を同定した。本研究ではまず、(1)PE21が単独で両方向性(bidirectional)の転写開始活性を示し、約50base下流の特異的な点からの転写開始を促すこと、PE21内に変異を導入するとヒトp53の転写活性がゼロとなることを実証した。次に、(2)ゲルシフト法やサウスウエスタン解析により、PE21結合性の未知の核蛋白質が存在することを確認し、この核蛋白質がPE21塩基配列の両端に結合することと転写開始活性および紫外線応答が強く相関することを見いだした。これらの観察結果より、ヒトp53遺伝子の発現はPE21と当該核蛋白質(p53転写因子)の機能で説明できると推定し、(3)p53転写因子の単離精製と遺伝子クローニングを目標として研究を展開した。PE21をプローブとしたサウスウエスタンスクリーニングでいくつかの候補遺伝子の単離に成功し、また蛋白質の精製ではHeLa細胞より当該転写因子活性を1000倍以上に精製することができた。これらの結果、ヒトp53遺伝子の発現を決定する特異的な転写因子(p53転写因子)の存在とその生化学的特徴が明らかとなってきた。本研究は、発がんストレス応答性のp53遺伝子の発現制御と細胞癌化の関連を追及するこれまでにない新しい研究の展開が期待できる状況まで到達した。
|