研究概要 |
新たな遺伝的発がんリスク遺伝子を特定するために、腫瘍発症に関係する候補遺伝子のミスセンス1塩基多型(ms-SNP)を昨年度からの15遺伝子に加えて、計35遺伝子の55エキソンについて検索した。方法はDHPLC法、RFLP法、シーケンス法等を用いた。 (成果1)P53遺伝子コドン72におけるms-SNPは以前から知られており、結果については相反する報告があったが、本研究において、300名の健常人と126名のがん患者を解析した結果によると、Arg/Arg, Arg/Pro, Pro/Pro型のうちArg/Arg型の肺がんに関するリスクはオッズ比:1.67,95%CI:1.03-2.73,を示し、有意であった。がん組織でもPro型のアレル頻度が有意に減少していた。これらの結果は、Arg/Argホモ型は高リスクであるというStoreyら(1998)の結果を支持しているように見える(投稿準備中)。 (成果2)DNA二本鎖切断修復遺伝子(RAD17)のエキソン14に見い出されたCTC(Leu)→CGC(Arg)という新しいms-SNPは105例の肺がん患者の解析結果でArg/Argホモ型のオッズ比が2.66,95%CI:1.26-5.62,と有意に高リスクであることが判明した(投稿準備中)。以上の他に9例の癌関連遺伝子におけるms-SNPが発がんの高リスクに関係することが示唆されている。うち1例のDNA修復遺伝子では、Thr/Alaのms-SNPが判明し、Ala/Alaホモ型の肺がんに関する有意な高リスクが示された(オッズ比:3.76,95%CI:1.08-13.11)(投稿準備中)。又、別の修復遺伝子では、理論上25%存在すべき片方のアレルのホモ型が健常人、がん患者何れでも検出できなかった。これはこのms-SNPの一方のアレルのホモ型は生存できないという重要な事実を示唆している。 以上の結果の多くは報文として未発表なので、詳細については一部割愛した。
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