研究概要 |
1.Mth1遺伝子欠損マウスで野生型に比べてSPF条件下の1年半飼育後の肺・肝臓等の特定臓器での自然発がんの上昇が有意に認められた。 2.rpsL遺伝子を指標とした突然変異の解析で、Mth1欠損による顕著なミューテーター表現型は認められなかった。 3.Mth1遺伝子欠損マウスの突然変異スペクトラム解析並びにMsh2遺伝子欠損との2重遺伝子欠損マウスでの解析の結果、Mth1欠損によって生じるミューテーター表現型は非常に弱く、8-oxo-dGTP等に起因すると考えられる突然変異が、他の修復機構によってバックアップされている可能性が考えられた。 4.Mutyh遺伝子欠損マウスで野生型に比べて消化管腺腫・腺癌、脾臓血管肉腫、肝臓血管腫等の自然生頻度の上昇が認められた。 5.生後4週齢の野生型並びにMutyh遺伝子欠損マウス各々十数匹に臭素酸カリウムを20週間連続して水投与し、24週齢の時点での腸管における腫瘍の発生を解析した結果、Mutyh遺伝子欠損マウスの十二指腸・空腸で多数の上皮性腫瘍の発生を認めた。この結果は、消化管内での酸化ストレスが消化管癌の発生に寄与していることを示唆する。 6.Mutyh遺伝子欠損マウスの自然突然変異を解析した結果、顕著なミューテーター表現型は認められなかったが、突然変異のスペクトラム解析で、G:C→T:A型変異等の有意な上昇を認めた。G:C→T:A型変異の上昇は、臭素酸カリウムを飲水投与したマウス小腸での酸化ストレス誘発突然変異の解析でも増強して確認されたことから、Mutyh遺伝子欠損マウスで顕著に上昇した変異が生体内の酸化ストレスに起因するものであることが示唆された。 以上、突然変異並びに発がん解析の結果、Mth1, Mutyhは内因性・外因性の酸化ストレスによって生じた8-oxoG等の酸化的DNA損傷に起因する変異並びに発がんを抑制していると考えられる。
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