エストロゲン依存性癌のがん化防御に関する研究

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12213132
• 研究種目: 特定領域研究(C)
• 研究機関: 藤田保健衛生大学
• 研究代表者: 原田 信広 藤田保健衛生大学, 医学部, 教授 (00189705)
• 研究分担者: 内海 俊明 藤田保健衛生大学, 医学部, 助教授 (10176711) ; 本田 伸一郎 藤田保健衛生大学, 医学部, 講師 (40257639)
• キーワード: アロマターゼ / エストロゲン / ノックアウトマウス / トランスジェニックマウス / 発癌感受性 / SNP / 組織特異的発現

研究概要

本年度はエストロゲン依存性に増殖する乳癌に注目し、乳癌組織内におけるエストロゲン動態、特にエストロゲン産生系及び情報伝達系の9種のエストロゲン関連酵素群の発現レベルと臨床病理学的な諸因子、予後因子などとの相関関係を明らかにした。さらにヒト・アロマターゼ遺伝子のエクソン10内にあるSNPと乳癌の発癌感受性との間の相関関係を明らかにした。当研究室で作製に成功したエストロゲン産生能を消失したアロマターゼノックアウト(ArKO)マウス及び野生型マウスに対して乳癌の化学発癌剤DMBAを経口投与して乳癌に対する感受性の差を示した。次に乳房組織におけるアロマターゼの転写調節を担うプロモーター領域の解析を行なった。乳房組織で特異的に選択されるエクソン1bの転写開始点の直ぐ上流域に存在するGREの前後にエクソン1bからの転写に重要と思われる特異的DNA配列が2個所あることが明らかにした。これらのDNA部位へは同一の核内因子が結合しており、その結合は多重エクソン1のスイッチング及びエクソン1bの組織特異的発現と相関が見られることからエストロゲンの過剰産生と関連する核内因子候補と考えられる。乳癌のがん化過程におけるアロマターゼの発現調節機構をin vivoで観察するために、ヒト・アロマターゼ遺伝子の多重エクソン1を含むプロモーター領域をβ-Gal遺伝子に融合したレポーターを導入したトランスジェニックマウスを作製した。このマウスは完全にヒト・アロマターゼ遺伝子と同様の組織特異的発現性及び多重エクソン1の組織特異的選択性を示した。このことよりこのHumanizedアロマターゼトランスジェニックマウスはヒトのエストロゲン依存性乳癌の発癌過程をin vivoで調べるための良いモデルマウスとなり得ると思われる。

研究成果

• [文献書誌] Utsumi,T. et al.: "Correlation of cyclin D1 mRNA levels with clinicopathological parameters and clinical outcome in hunaan breast carcinoma."Int.J.Cancer. 89. 39-43 (2000)
• [文献書誌] Utsumi,T. et al.: "Elevated steroid sulfatase expression in breast cancers."J.Steroid Biochem.Mol.Biol.. 73. 141-145 (2000)
• [文献書誌] Takeyama,J. et al.: "17β-Hydroxysteroid dehydrogenase type 1 and 2 expression in the human fetus."J.Clin.Endocrinol.Metab.. 85. 410-416 (2000)
• [文献書誌] Kristensen,V.N. et al.: "Genetic variations of Cyp19 (aromatase) and breast cancer risk."Oncogene. 19. 1329-1333 (2000)
• [文献書誌] Watanabe,T. et al.: "Estrogen secreting adrenal adenocarcinomain an 18-month-old boy : Aromatase activity, protein expression, mRNA and utilization of gonadal type promoter."Endocrine J.. 47. 723-730 (2000)