研究概要 |
宿主による自家がん認識の分子基盤解明を目的として、伊東研究員はヒトCD8+キラーT細胞により認識されるがん拒絶抗原遺伝子及びペプチドの解析を実施し、多数の遺伝子とペプチドを同定した。一方、八木田研究員は、NK細胞によるがん細胞の認識と破壊の分子機構を解析し、CD27,4-1BB,NKG2/CD94,FasL,TRAILといった分子の関与を明らかにした。即ち、伊東研究員はヒトHLA-クラスI拘束性上皮がん特異的キラーT細胞株を作製し、それの認識するがん退縮抗原遺伝子をcDNA発現クローニング法にてクローニングする。さらに、それらにコードされるがんペプチド抗原を同定し、同ペプチドによるin vitro及びin vivoにおけるキラーT細胞誘導能を明らかにする。その結果、がんの大部分を占める上皮性がん(腺がん及び扁平上皮がん)において、CTLにより認識されるがん抗原を遺伝子レベル及びペプチドレベルで多数明らかにしてきた。即ち、上皮性がん細胞株cDNAライブラリー(食道がん、膀胱がん、膵がん、肺がん、大腸がん)よりcDNA発現クローニング法によってCTLエピトープをコードする遺伝子を70個以上同定した。また、それらにコードされるペプチドを200種類以上同定してきた。これらのペプチドで誘導したCTLはがん細胞株に対しては傷害性を有するものの、正常細胞に対してはたとえ過剰の当該ペプチド存在下でも細胞傷害性を示さなかった。さらに、予めがん抗原ペプチド特異的CTL前駆体の患者末梢血リンパ球内における存在の有無を、新技術を開発して測定可能とした。一方、八木田研究員はCD27リガンド(CD70)及び4-1BBリガンドに対するmAbを作成し、標的細胞上のこれらの分子がNK細胞の活性化に関わることを示した。また、Fasリガンド(FasL)及びTRAILに対するmAbを作成し、NK細胞上に発現するこれらの分子が転移の抑制に働くことを明らかにした。さらに、Ly-49B,EやNKG2A/CD94、NKp46等のNK細胞上の認識分子に対するmAbを作成し、その発現と機能の解析を進めている。
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