研究概要 |
キラーT細胞により認識されるヒト上皮性がん拒絶抗原遺伝子のクローニングとペプチド抗原の同定の研究にて、HLA-A24拘束性分子としては転移癌に発現するLck分子(Harashima et al.,Eur.J.Immunol,31:323)や薬剤耐性に関与するMDR3を同定した(Yamada et al.,Can.Res.,61:6458)、またHLA-A2拘束性分子の同定においては本年度は多くの成果を得た。即ち、膵臓癌由来6つの分子と12ペプチド(Ito, et al., Can. Res. 61:2038)、Lck及びCypB由来HLA-A2結合性ペプチドの同定である。これらのペプチドでは第1相/第2相臨床試験に使用中である。更に大腸癌由来cDNAより45個の分子と133ペプチドを同定した。またHLA-B46,-B52拘束性分子とペプチドを世界ではじめて同定した。一方、初期のペプチドワクチン第1相臨床試験にてその安全性と特異免疫誘導能を確認した(Miyagi et al.,Clin.Can.Res.,7:3950)。患者個々のCTL前駆体を同定してのテーラーメイド型レジメにて2000年10月より開始し、2002年1月末現在にて評価可能な62症例にて安全性を確認、かつ特異免疫誘導能は、ほぼ全例で確認された。臨床効果は3ケ月評価でPR2,SD30,PD30であり、何らかの抗腫瘍作用は62例中27例(44%)に及んだ。さらに、384wellを用いたペプチド特異的CTL同定法を確立した。これらの研究結果は、がん患者個々の免疫学的特性(HLA 多様性、がん抗原の有無、CTL前駆体や抗体の有無)に基づいたテーラーメイド型がん予防や治療法の開発に科学的基盤を賦与するものと考えられる。
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