研究概要 |
「起始遺伝子を起点としたがん学」を推進してきた(発がんの扇理論の提唱:Mutation Res., 477: 155-164, 2001, Gene, Chromosome and Cancer 38: 357-367, 2003)。目的は、「がんの原因論」を明確にし、「がんの制御」の根拠を示し、「がん進展阻止」の実際を示すことにある。我々は、独自にリファインされたユニークな疾患モデル(Ekerラット、Nihonラット、Tsc2 & Tsc1 knockoutマウス、Erc and Niban knockoutマウス)の開発を進め、個体レベルで発がん(特に、遺伝性腎がん)の初期病変から経時的に観察し、その表現型(病理学的)と遺伝子型(分子遺伝学的)を分子レベルで解析し、遺伝性がんでも、がんの進展は「遺伝子発現病(gene expression disease)」であることを示し、「遺伝子ネットワークの異常」(発がんの連盟的首位性)としてとらえ、その特異点(表現型)の分子を明らかにし多段階発がんの中でepigeneticな変化の意義を追求した。最終的にはヒトがんの予防、治療に資すようとするものである。 (1)腎発がん過程で発現する新規Niban遺伝子の解析:Niban遺伝子産物は、腎発がんの初期病変である変異尿細管から強く発現が観察された(Oncogene 23: 3495-3500, 2004)。Niban遺伝子は種々のストレス反応により発現が誘導されることを見出した。Niban遺伝子のノックアウトマウスの樹立にも成功し、機能解析を進めている。 (2)腎発がん過程で発現するErc遺伝子のノックアウトマウスを作製し、Tsc2ノックアウトマウスの交配実験を行い、がん進展に及ぼす影響をしらべた。 (3)分子標的治療の実際(rapamycin (mTOR阻害剤))を行った。Eker rat腎がんは縮小したが、微少病変は残存していた。これは、多段階発がん過程においてステージ依存的な薬剤感受性の違いの存在を示す重要な知見と考える(投稿準備中)。 (3)分子標的治療の実際(rapamycin (mTOR阻害剤))を行った。Eker rat腎がんは縮小したが、微少病変は残存していた。これは、多段階発がん過程においてステージ依存的な薬剤感受性の違いの存在を示す重要な知見と考える(投稿準備中)。 (4)新規腎がん(Nihon)ラットの原因遺伝子の単離・同定に成功した(Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 101: 2023-2027, 2004)。
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