研究課題
特定領域研究
レトロウィルス及び放射線誘発マウス造血器腫瘍モデルを用いて研究を行った。それぞれの系で主な対象とした遺伝子はEvi9/Bcl11aとRit1/Bcl11bで、これらは同一の遺伝子ファミリーに属し、それぞれB細胞の分化、T細胞の分化と対照的な役割を担っていた。Evi9/Bcl11aはヒトB細胞腫瘍原因遺伝子及びマウスBXH2急性骨髄性白血病原因遺伝子である。Bcl11aノックアウトマウスを用いて、Bcl11aがB細胞分化に必須であることを明らかにしたが、その現象がE2Aとともにμエンハンサーに対する転写制御作用を介していること、Bcl11aがT細胞の分化にも重要な役割を果たしている可能性を示した。また、Bcl11a AZを発現させた骨髄細胞の移植がT細胞性胸腺リンパ腫の発生を促すこと、このリンパ腫の大部分が宿主由来であることを明らかにした。一方、Rit1/Bcl 11bはマウス胸腺リンパ腫で抑制遺伝子として同定された。Bcl11bノックアウトマウスを解析すると、Bcl11bはT細胞の分化に必要であり、その欠損はT細胞にアポトーシスをもたらすことが分かった。このマウスを用いてγ線照射による発がん実験を行うと、ヘテロ変異体マウスは野生型マウスに比べて明らかに高頻度で胸腺リンパ腫を発症することが示された。また、ヘテロ変異体に発症したリンパ腫の約50%に野生型Bcl11bアレルのLOHを認めた。さらに、Bcl11bとp53の二重ヘテロ変異体は非照射でも生後300日以内に高頻度で胸腺リンパ腫が発生した。Bcl11bノックダウン細胞株を用いて、Bcl11b蛋白の減少により抗アポトーシス蛋白・BclxLの減少を誘導してアポトーシスをもたらすこと、S期で細胞周期を停止すること、Chk1の活性化(リン酸化)に障害がみられることがわかった。これらの結果から、Rit1がChk1と関連しゲノム保持機構に働くことが示唆された。NUP98-HOXA9トランスジェニックマウスを解析し、G-CSFに対する過剰応答性、骨髄中の前駆細胞の顕著な増加が明らかになった。レトロウィルス挿入変異の系を用いて白血病化にNUP98-HOXA9と協調的に働く遺伝子としてMeis1及び新規の遺伝子5種が同定された。これらのうちFcgr2bはヒト血液腫瘍でも異常を来していて、本モデルがヒト白血病発症の分子機構の理解に有用な情報をもたらす可能性が示唆された。さらにこのシステムを改良し、NUP98-HOXA9とHOX co-factorの発がんにおける協調遺伝子の候補としてMAPKシグナル系の分子やMel1遺伝子を同定した。
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