プロモーター領域CpGアイランドは、遺伝子発現のスイッチとして働く。昨年度まで、ヒト胃がんを材料に、methylation-sensitive-representational difference analysis (MS-RDA)法によるゲノム網羅的なメチル化異常の検索を行い、9個の遺伝子(LOX、HRASLS、FLNc、HAND1、Thrombomodulin、bA305P22.2.3、a homologue of RIKEN 2210016F16、FLJ32130、PGAR)が、5'CpGアイランドのメチル化によりサイレンシングされることを見いだした。本年度は、胃がん手術材料93例を用いて、これらのCpGアイランドが高頻度にメチル化される胃がんと、正常ではメチル化されたプロモーター領域CpGアイランドが高頻度に脱メチル化される胃がんとは、異なるグループを形成することを示した。また、ras遺伝子によりトランスフォームした線維芽細胞に対して増殖抑制作用をもつことが知られていたLOX及びHRASLS遺伝子を、胃がん細胞に導入した。LOXについては、増殖速度、軟寒天中での形成コロニー数、ヌードマウスでの腫瘍の大きさを抑制することが示され、胃がん細胞に対しても増殖抑制作用をもつことが証明された。
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