研究課題
特定領域研究
HIV-1感染者6例の末梢血でのmetaphase spreadを作製し観察したところ、全例でpremature sister chromatid separation (PCS)を認めた。また野生型Vprを有するウイルスと欠失したウイルスを健常人末梢血単核球細胞に感染させるとVpr依存的にPCSが認められた。さらにVpr発現細胞では解析した細胞の約半数のにPCSが認められたことから、HIV-1感染で認められるPCSはVprに依存している事が示された。またVprによるPCSでは、コヒーシン蛋白質(SCC1/Rad21)を始めとする複数のキネトコア構成蛋白質(INCENP、Aurora-B、CENP-F)が失われていた。VprはM期染色体の特にセントロメア領域に染色性を認め、CENP-Aと結合する事を見出した。一方、Vprの結合蛋白質であるヒストンアセチル化酵素p300の局在も、同様にセントロメア領域に認めた。さらにヒストンメチル化酵素suv39h1がVpr発現早期から消失傾向を示した。Vpr/p300複合体の凝縮染色体のセントロメア局在により、メチル化ヒストンで結合するヘテロクロマチン蛋白質(HP1α)の遊離やヒストンメチル化酵素suv39h1の消失により、メチル化/アセチル化のバランスが破綻していることが示唆される。また、p300siRNAによりHP1αの消失およびPCSが抑制された。この事実は、クロマチンのアセチル化、引き続き生じるHP1αの消失が引き金となって、セントロメアおよびコヒーシン領域に至るキネトコア構成タンパク質群が失われ、結果としてPCSが誘導されていることが考察される。今回見いだされた現象がHIV感染者で高頻度に認められる悪性リンパ腫の病因を理解するための手がかりを与えるものと思われる。また、Vprによるクロマチンのアセチル化が、ウイルス感染や複製においてどのような役割を担っているかを明らかにすることも重要である。
すべて 2004
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