がん患者の抗体を用いた発現クローニング法(SEREX)によるがん抗原の同定

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12213165
• 研究機関: 理化学研究所
• 研究代表者: 小幡 裕一 理化学研究所, リソース基盤開発部, 部長(研究職) (30177290)
• 研究分担者: 坂本 純一 京都大学, 大学院・医学研究科・疫学研究情報管理学講座, 教授 (70196088)
• キーワード: 癌抗原 / 免疫治療 / cDNA / 発現クローニング / 胃癌 / 乳癌 / 前立腺癌 / 大腸癌

研究概要

癌抗原をターゲットにした癌の免疫療法の臨床試験が本邦でも開始されている。しかし、現在ターゲットとできる癌抗原の数と種類は極めて限られており、多くの種類の癌で癌抗原を同定することが必要とされている。特に発生頻度が高い胃癌、肺癌、大腸癌などの上皮性固型癌の癌抗原の同定が急がれているが、標的癌細胞株ならびにCTLの樹立という技術的な拘束があり、これらの癌の癌抗原の同定は困難を極めている。癌抗原同定の最も有効な方法の一つは、あらゆる癌で癌抗原の同定を簡便に試行できるSEREX法である。SEREX法は、癌患者の自家血清と癌細胞との反応を検索することにより癌抗原を同定する方法(Autologous typing)に、分子生物学的手法を取り入れ発展させた方法である。胃癌、乳癌などを対象に、異なる組織型が存在することを考慮に入れ、各々の癌5症例を検索することを目標にSEREX法を用いて癌抗原を同定することを試みた。これまで胃癌5症例、前立腺癌3症例、乳癌2症例、大腸癌2症例、悪性軟部腫瘍2症例、肺癌1症例の検索を行った。癌患者の免疫系は予想外に活発であり、分泌蛋白、細胞膜蛋白、細胞質内蛋白、核内蛋白など600種を越える抗原を同定した。また免疫原性の強い抗原、突然変異に由来する抗原なども同定した。さらに胃癌、前立腺癌、乳癌では、各々の抗原の発現特異性と免疫原性の癌特異性を基準に抗原を選別し、癌の診断・治療に有用である可能性のある抗原を各々の癌で約20種を選択した。これらの中には、正常では精巣にしか発現せず、免疫治療のかっこうのターゲットと考えられるCT(Cancer-Testis)抗原の一種であるSSX-2やヒト内在性レトロウイルス産物など有望な抗原が含まれている。

研究成果

• [文献書誌] Tsujimura, K., Obata, Y., Matsudaira, Y., Ozeki, S., Yoshikawa, K., Saga, S., Takahashi, T: "The binding of thymus leukemia (TL) antigen tetramers to normal intestinal intraepithelial lymphocytes and thymocytes"J. Immunol.. 167. 759-764 (2001)
• [文献書誌] Song, J., Ugai, H., Ogawa, K., Wang, Y., Sarai, A., Obata, Y., Kanazawa, I., Sun, K., Itakura, K., Yokoyama: "K. K. : Two consecutive zinc fingers in Spl and in MAZ are essential for interactions with cis-elements"J. Biol. Chem.. 276. 30429-30434 (2001)
• [文献書誌] Iwata, H., Yamamoto. M., Nemori, R., Mizutani, M., Iwase, T., Miura, S., Obata, Y., Hara, Y., Omoto, Y., Toyama, T., Yamashita, H., Iwase, H., Kobayashi, S.: "Localization of gelatinolytic activity can be detected in breast cancer tissues by film in situ zymography"Breast Cancer. 8. 111-115 (2001)