研究課題
特定領域研究
癌患者の免疫系が抗原として認識する癌に発現する分子のリストを作成することを、癌患者が産生する自家抗体で癌細胞由来の発現cDNAライブラリーを検索するSEREX発現クローニング法を用いて試みた。これまで胃癌5症例、前立腺癌3症例、乳癌2症例、大腸癌2症例、悪性軟部腫瘍2症例、肺癌1症例の網羅的検索を行い、700種を越える抗原を同定した。癌患者の免疫系は驚くほど活発であり、癌患者の免疫系が抑制もしくは非応答の状態ではないこと、また認識される多くの抗原は広範囲の組織に発現する変異のない正常蛋白質由来であり、癌の発生は"Danger Signal"として免疫反応を惹起している可能性が示唆された。同定した抗原から癌の診断・治療に有用である可能性のあるものを選択するために、各々の抗原の発現特異性と抗原に対する免疫反応の癌患者特異性を検討し、これまで胃癌、前立腺癌、乳癌で、各々約20種の抗原を選択した。例えば胃癌ではE-cadherin/Unknown Gene融合蛋白、Hsp60、Unknown Gene YS278、乳癌ではSSX-2、NY-BR-1、Hsp105、また前立腺癌ではHERV-K、NY-BR-1、Fanconi Anemia Group A等を選択した。これらの中で特に免疫治療の格好のターゲットと考えられる有望な抗原は、前立腺癌、Grem cell tumorsに特異的に発現するHERV-Kヒト内在性レトロウイルス蛋白、正常乳腺の分化抗原で乳癌、前立腺癌にも特異的に発現するNY-BR-1、免疫治療の標的として理想的なCT(Cancer-Testis)抗原の一種であるSSX-2であった。これらの抗原に対する抗体産生を指標にした免疫診断法の開発および細胞傷害性T細胞の誘導実験を行った。
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