インターロイキン2によりチロシンリン酸化される分子としてFYVE finger分子Hgs/Hrsを遺伝子単離した。その機能を調べるためにHgs遺伝子ホモ変異マウスを作成したところ、胎生期10.5日以内に死亡した。HgsはSmad2やSmad3分子と直接会合し、これらSmadsをアクチビン受容体に効率よく会合させる機能を有することを見出し、Hgsの変異がアクチビン受容体からの情報伝達不全を引き起こし、これが胎生致死の原因と考えられた。Smad2、Smad4は癌抑制遺伝子として働いていることが明らかにされているため、Smads活性化に重要なHgsもまた癌抑制遺伝子として機能している可能性を想定し、Hgsの遺伝子座(17q25)に相当する領域のLOHが認められている食道癌におけるHgsの変異を検索したが、これまでのところ明らかなHgs分子の異常は見つからなかった。Hgsの各組織での機能、特に癌抑制機能を検討するためにCre-loxPシステムを用いてHgsコンディショナルノックアウトマウスを作成しようと試みたが、コンディショナルターゲティングベクターがうまく機能せず、胎生致死となった。現在ターゲティングベクターを作製し直しているところである。ドミナントネガティブHgsがアクチビン以外にもSmad活性化シグナルを抑制するかどうかを調べた結果、TGF-βとともにBMPのシグナルも抑制することを見出した。Hgsと同様FYVE fingerドメインを持つSARAのドミナントネガティブ分子(SARA DN)がTGF-βのシグナルを強く抑制することは報告されているが、我々はSARA DNのBMPシグナルに対する抑制作用は非常に弱いという結果を得ており、それらFYVE fingerドメイン分子のSmad活性化における使い分けがあるのではないかと考え、さらに研究を進めている。
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