研究概要 |
1、アポトーシスは生体の発生時期におけるプログラム細胞死に伴ってよく観察される細胞の死の様式であるが、抗癌剤や放射線などの非生理的なストレスで癌細胞を処理した際にも誘導される。このアポトーシスの実行過程において主要な働きをするカスパーゼファミリープロテアーゼは、プロテアーゼカスケードを形成してアポトーシスのシグナルを伝達するとともに、様々な細胞内基質を切断することにより細胞をアポトーシスの状態へと陥らせる。アポトーシス抑制シグナルを伝達することが明かとなり近年注目を集めているセリン・スレオニンキナーゼAktの、アポトーシス誘導時における活性変化並びにカスパーゼによる分解とその切断断片の活性変化を検討したところ、Aktがアポトーシス進行過程においてカスパーゼにより切断されることを見い出した。Aktに点変異を導入することによりその切断部位を同定した結果、108、119、434番目のアスパラギン酸で切断されることを同定した。また切断されたAktはそのキナーゼ活性を失うことも見い出した。よって抗癌剤は,Aktを介した生存シグナルをAktの分解を誘導することにより遮断し、アポトーシス進行を促進していることが明らかになった。 2、またAktと相互作用する分子としてHsp90を同定した。Hsp90及びAkt上の結合に関与する部位を様々な断片を作製することにより同定した。さらにこのAktとHsp90の結合を阻害することによりアポトーシスが誘導されることが分かり、Hsp90はAktの活性を正に制御し、アポトーシス抑制に関わっていることを明らかにした。さらにHsp90はAktの活性化に重要なリン酸化されたスレオニン残基の脱リン酸化を阻害することによりAktの活性を制御していることも明らかにした。
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