細胞周期のチェックポイント機構の一端を明らかにするため、哺乳動物の制御機構と同時にその解明のためのモデルとして分裂酵母の研究も進めている。単離同定された遺伝子とこれまでに明らかにされている制御因子との位置関係の解明に力を注いでいる。 今年度は、分裂酵母のΔmik1 wee1-50二重変異株を相補するwos1と名付けた遺伝子の機能解析を進めた。 Wos1遺伝子は、スプライシングの違いによりヒトでは少なくとも2種類存在する(Wos1A、B)。Wos1Bは、eIF2αキナーゼであるが、Wos1Aは、eIF2αキナーゼ活性を持たない。分裂酵母には、Wos1Aに対応する遺伝子が存在する(spwos1)。この遺伝子破壊株は致死とはならず、野生株と同程度の増殖能を示した。Wee1破壊株は野生株に比べ、増殖速度が遅い。Δwee1Δwos1二重破壊株は、野生株の増殖速度と同程度まで回復した。このことは、分裂酵母ではwee1遺伝子産物が不活性化されると、何らかの機構でwos1遺伝子産物が活性化され、G2期からM期への進行が抑制されることを示唆している。更に、Wos1遺伝子とチェックポイント機構との関係を調べるため、Δwee1Δwos1二重破壊株のUV、ブレオマイシン、ヒドロキシウレア等に対する感受性を検討した結果、生存率の低下はみられなかった。このことから、wos1遺伝子は、チェックポイント機構やcdc2のリン酸化・脱リン酸化を介さない別の機構でG2期からM期の進行を抑制していると考えられる。
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