申請者らは、ツメガエル卵抽出液からDNA複製開始に必要なDNAひねり因子を精製した。この因子は、分子量140kDa(Cdc68タンパク質の類似体)と87kDa(hSSRP1の類自体)のポリペプチド鎖から成り、二重鎖DNAに負のねじれを導入する活性を持つ。本研究では、培養ヒトがん細胞のDNAひねり因子の発現と精製を行い、二重鎖DNAおよびヌクレオソームの構造に対する影響を調べる。さらに、DNAひねり因子と相互作用する因子を探索し、これら因子の、細胞のがん化に伴う動態と機能の変化を調べる。以上の実験により、がん細胞のDNA複製機構の特異性を明らかにすることを目的とした。 DNAひねり因子の140kDaサブユニットにHisタグを付加したクローンと、hSSRP1のクローンをバキュロウイルスに組み込み、両サブユニットを共発現させ、Niキレートカラム、SP、およびHAカラムを用いて精製した。今後、クロマチン構造をとったSV40 DNAのin vitroでの複製に対するDNAひねり因子の作用を解析する予定である。両サブユニットに対する抗体を用いて、HeLa細胞とヒト二倍体繊維芽細胞を染色したところ、核全体、特に、核小体が染色された。HeLa細胞から単離された核にはDNAひねり因子が結合しており、高塩濃度溶液によって抽出された。抗体を用いてDNAひねり因子を除いたツメガエル卵抽出液中で形成されたクロマチンと、DNAひねり因子を含む卵抽出液中で形成されたクロマチンとに対するヌクレアーゼ感受性を調べたところ、前者よりも後者のほうが感受性が高かった。さらに、精製DNAひねり因子は、二重鎖DNAのみならず、ヒストンを固定化させたカラムに結合した。以上の結果から、DNAひねり因子は、DNAおよびヒストンに結合してクロマチン構造をゆるめ、DNA複製が起こりやすくする働きがある考えられる。
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