研究概要 |
我々は軟骨特異的血管新生抑制因子Chondromodulin-1(ChM-1)を見いだした。本年度は、ChM-1遺伝子欠損(ChM-1 KO)マウスの作出を行い、その表現形を解析した。その結果、胎生期に器官形成等にはChM-1遺伝子欠損の影響を認めなかったが、生後12週齢では明らかな骨密度の増加が認められた。この骨密度増加の現象を詳細に解析した。すると、単位骨量(BV/TV)はKOマウスでは野生型の約2.5倍であり、骨芽細胞面と破骨細胞面ではともにKOマウスにおいて顕著な減少(それぞれ、60%,33%)が認められた。石灰化速度および吸収面もまた顕著な減少(それぞれ、37%,64%)が認められた。従って、KOマウスでは骨形成・骨吸収の双方が低下していることが分かった。骨吸収の低下の度合いが骨形成速度低下を上回ることにより骨密度増加に至ることが分かった。従って、ChM-Telに骨リモデリングファクターとしての新しい生理機能があることが明らかになった。一方、ChM-1の生物活性領域に相同性を持つ新規遺伝子Tenomodulin(TeM)を見いだした。血管新生抑制機構が発達している眼組織における発現パターンを詳細に解析した。その結果、TeMは外眼筋に連なる腱・強膜・角膜・レンズの他、網膜では神経節細胞層、内顆粒細胞層、色素上皮細胞に発現することが明らかとなった。ChM-1は腱・強膜・角膜・レンズに発現を認めないが、網膜においてはTeMとChM-1のいずれもが発現していた。さらに、アデノウイルスベクターを用いてTeMのC-末端領域を網膜血管内皮細胞に発現させてその血管新生抑制活性を確認することに成功した。
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